モバードのレアモデルをご紹介致します。クロノメーター仕様の角型ムーヴメントを搭載し、とても魅力的なダイアルが目を引く一本。文字盤の中央に円がレイアウトされ、さらにそこから放射状に線が描かれていますが、こういったデザインはよくアールデコの影響を受けたものだと言われ、1930年代頃のごく一部にしか存在しなかったスタイルのひとつです。

細長い角型ムーヴメントはスワンネックなどの微調整機構を備えたものではありませんが、4方向での調整を施した特別な仕様になっています。実際同じ機種でも通常は"UNADJUSTED"と刻印されているものがほとんどです。現在においてクロノメーターとしての完璧な精度が期待出来るわけではありませんが、製造年代を考えれば十分調子良く動作しています。

ラグにはベルトを取り付けるための穴がありますが、これは元々はなかったと考えています。固定式のバーが取り付けられたタイプだったのではないかと思いますが、恐らくベルトの交換が容易に出来るようにこのような仕様に変更したのだと推測されます。オリジナル性を重視したいところではありますが、この部分以外はさほど気になる箇所はありません。文字盤もある程度ダメージが見られますが、年代やデリケートな角型であることを考慮すれば、十分なコンディションだと思います。