Maintenance Report #5
2022.07.26
先日オメガのランチェロをお預かりしました。弊店で販売したものではありませんでしたが、オーバーホールと針の夜光部分の修正をご希望とのことでご相談いただきました。入手した時から針の夜光部分がオリジナル状態ではない上、あまりうまくない仕上がりで元々気に入っていなかったそうです。
文字盤の夜光部分の状態を参考にしつつ、オリジナルのままだったらきっとこんな雰囲気だったのではなかろうか...といったイメージで作業しますが、若干イメージと異なる仕上がりになる可能性があることなど、多少はリスクも伴うことをお伝えしてお預かりしました。
最初はこんな状態で文字盤の夜光部分とはまったく色味が合っていないだけでなく、アローハンドの三角の部分ははみ出してしまっています。持ち主の方はこれをなんとかしたかったようです。文字盤は十分な状態ですから、余計気になっていたのでしょう。よく分かります。
まずは針を外して、元の夜光部分をきれいに除去します。なるべく針そのもののメッキ部分を傷めないように注意します。
文字盤外周の夜光部分の色を参考に夜光塗料を調合し、入れ直します。ひとまず文字盤の上に乗せてみた様子がこちら。乾いてくると多少色味が変わってくることがあり、納得のいく雰囲気にならなかった場合はやり直します。この時は一発でうまくいきました。
もちろん、当初のご依頼通りオーバーホールも行います。このランチェロは長年ほったらかしだった可能性が高く、あちこち錆びが出ている箇所もあってそれなりに手がかかりましたが、比較的スムースに作業出来ました。
この時のメンテナンスで一番難儀したのは実はこのケースでした。ケースの内側に取り付けられた古いパッキンが激しく劣化していて、錆びついている上にカッチカチに固まっていて、これを取り除くのが本当に大変でした。裏蓋のパッキンはドロドロに溶けている場合も大変ですが、こっちの方が断然苦労しました。
最終的にムーブメント、文字盤、針一式を組み込んだ状態がこちら。かなりいい雰囲気になったと思います。ムーヴメントも絶好調そのもの。ご依頼下さったお客様もこの状態を見て大変喜んで下さいました。なによりです。
Special thanks to Mr.M