Maintenance Report #2
2011.02.26
ミドー・マルチフォートの針の夜光部分を修正する作業のご依頼がありました。夜光部分はいわば消耗部品のようなもので、寿命は決して長くありません。製造当時からの状態のままきれいに残っている場合もありますが、それは極めて稀なことだと言えます。大抵は入れ直してあったりするものですが、こんな風に剥げ落ちているとさすがに見栄えも悪く、せっかくの雰囲気が台無しになってしまうもの。
そこで、そんな時は夜光の入っている箇所だけを入れ直す作業を行うことによって機能性を蘇らせつつ、全体の雰囲気もぐっと良くすることが出来ます。年代物の時計の最大の魅力のひとつでもある「経年変化」によるテイストを損なわないように修正しますが、文字盤の焼け具合とのバランスなどを考え、出来るだけ違和感が生じないように心がけます。
修正した針を取り付けた状態。元々の夜光部分をきれいに掃除してから、文字盤のアラビア数字のインデックスの部分を参考に色合わせします。この写真だとまだ秒針がついていませんが、なかなか自然な雰囲気を再現出来たと思います。
秒針を取り付けてケースに組み込んだ状態。普通に腕に着けた状態で見る分にはさほど修正したことは気になりません。大抵はむしろこんな風に自然な風合いに近づけることが出来ます。夜光が剥げ落ちてしまった場合だけでなく、文字盤の雰囲気に合っていないような場合にもこのような作業は有効です。基本的に長短針の片方だけが剥げ落ちている場合でも両方の針を入れ直します。
古いものですから、100%のオリジナル性をキープするのはそもそも無理な話です。しかしながら、このような作業を重ねることも定期的なオーバーホールなどと同じく、年代物の時計を楽しみながら使っていく上で重要なことのひとつかも知れません。
Special thanks to Mr. S (Tokyo)
Mido Multifort C1940'S